ウイルス病の出現および再現
1995年アフリカのザイールでエボラ出血熱の爆発発生があり、世界は大きな衝撃を受けました。この恐るべき熱病は1976年にアフリカのザイールとスーダンで始めて認められ致命率の高さから世界を震えあがらせたウイルス病ですが、その後しばらく姿を隠していたのです。また、疫学者はインフルエンザウイルスの不連続変異によって近く世界流行が起こると警告しています。このようにウイルス病はしばしば突如として発生し、また消えることが知られています。表4に過去30年の間に世界で記録された著名なウイルス病を挙げて見ました。
表 4.最近30年間に世界で出現したウイルス病
ウイルス
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病 名
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年 次
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報告地
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マールブルグウイルス
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出血熱
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1967
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中央ヨーロッパ
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インフルエンザウイルス(H3N2)
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インフルエンザ
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1968
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アジア
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エンテロウイルス70
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急性出血性結膜炎
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1969
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アフリカ
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ラッサウイルス
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出血熱
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1969
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ナイジェリア
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日本脳炎ウイルス
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日本脳炎
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1969
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タイ
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エボラウイルス
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出血熱
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1976
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アフリカ
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インフルエンザウイルス(H1N1)
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インフルエンザ
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1977
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アジア
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リフトバレーウイルス
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リフトバレー熱
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1977
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エジプト
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ヒト免疫不全ウイルス
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エイズ
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1981
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米 国
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Reston virus
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サルの致死病
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1989
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アジア、米国
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Hantavirus
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Hantavirus肺症候群
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1993
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米 国
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記録を見ると、これら新ウイルス病の出現はいずれも突如として出現しており、しかもその大部分は予想さえされなかったものです。また、その半数はこれまで未知のウイルスです。これらのウイルス病はそれまでどこに存在し、どのようにして人間の病気として出現したのでしょうか。インフルエンザの世界流行の出現の機構についてはウイルスの特異な遺伝子再集合によることは既に説明しました。過去30年間にインフルエンザの世界流行は2回経験されましたが、いずれも最初のウイルスの発見はアジアであるのは大変興味あることです。私はこれは偶然ではないと考えています。インフルエンザウイルスの不連続変異はブタの体内でトリのウイルスとヒトのウイルスが遺伝子を交換する事により起こると推定しました。
中国南部では人口の稠密に加えて食用のブタとガチョウ、アヒル等の大規模な市場が存在することを私は現地で見てきました。ウイルスの遺伝子交換を現実に証明することは至難の業ですが、このような環境で起こりうることは想像に難くありません。40年前のH2N2インフルエンザウイルスの出現もアジアからでした。