第26話
 シリーズ 水中の不思議なミクロの世界 〜その3〜
   陸水 −生命を育む多彩な水界−
 

 
「主な対象読者」
 中学生から高校低学年生までが主な対象者です。
生命体に必要な水についてまとめました。
「先生へのお願い」
 言葉に惑わされると先に進みませんから、むずかしい漢字は誰かに意味を聞くとよいでしょう。
また意味が判らない用語がありましたら「微生物の用語解説」で調べてみてください。
児童や生徒でも読めるように難しい漢字には(おくりかな)をつけました。お父さんやお母さんが子供と一緒に読んでくださることをのぞんでいます。
 親子で興味と時間を共有できることを期待しています。
 
本 文 目 次
 1. 水の化学式
 2. 元素、原子、分子
 3. 水の構造
 4. 水の密度
 5. 水の熱量
 6. 水蒸気の圧力と蒸気機関車
 7. 水の表面張力
 8. 物質を溶かす性質
 9. 純粋な水の製造
 10.特定単位の基準
 1. 陸水環境
 2. 陸水の種類
 3. 水の循環
 1. 水の利用
 2. 水を浄化する方法
 3. 水質を調べる方法
 1. 世界の大河
 2. 湖の区分
 3. 世界の大湖
 4. 世界の塩湖
 5. 世界の汽水湖
 6. 世界最高地にある湖と最深の湖
 著作 野村 節三
 
 

 
 
第26話 シリーズ 水中の不思議なミクロの世界 〜その3〜
        陸水 −生命を育む多彩な水界−
 
 「シリーズ その1」では、地球上で水とくに海水の出現から、生命誕生の過程を追って広く生物界を眺め、水中のミクロの世界へと誘(いざな)いました。そして、「シリーズ その2」では、海水の性質と多様な海の生態系へ話を進めて、海での微生物の役割と環境異常や食中毒などの原因になる有害な性質を探ってから、「シリーズ その3」では、陸上の水(陸水)の特徴とその利用、さらに陸水の大部分を占める世界の特色のある川や湖について述べることにしましょう。
 
第一章 不思議な水の性質
 水はあまりにも身近にありますから、普段、私たちは無意識に使っていますが、実は水には不思議な性質があるのです。水が特殊な性質を持っているからこそ「水の惑星」といわれる地球で生物が生きてゆけるのです。はじめに、少し難しくなりますが、生物にとって欠かすことができない水について、物理・化学的に探ってみましょう。
 
1. 水の化学式
 一般に水が水素と酸素から成っていることはよく知られています。そのことは、水を電気分解すると、陰極から水素ガス(H)が2体積と陽極から酸素(O)1体積ずつ発生することから判ります。そこで、水素の元素記号をH、酸素をOで表しますと、水の電気分解の反応は次の式になります。
   2HO → 2H + O
 
 また、両ガスを体積で2:1の割合で化合(火を近づけると爆発的に化合)させると2体積の水蒸気が生じます。そこで、この水ができる反応は電気分解の逆で次の式になります。
   2H + O → 2H
 
 これらのことから水の化学式(分子式)はHOとなるのです。つまり水は水素の酸化物といえます。
 
2. 元素、原子、分子 
 ところで、宇宙のすべての物質を化学的に分解してゆくと、もはやそれ以上分解できない物質になります。その物質を元素といいます。
 
 これまでの話にでてきた水素、炭素、珪(ケイ)素、酸素、窒素、硫黄(イオウ)、塩素、臭素、ヨウ素、リン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、金、白金、銀、ヴァナジウム、ガリウム、ラジウム、ウランなどは元素です。現在までに知られている元素は最も軽い水素から、最も重い人工元素のレントゲニウムまでの111種の元素です。この内で、天然にある元素は水素からウランまでの92種の中で、テクネチウム(人工元素)以外の91種です。
 
 すべての元素は、それぞれ原子という実体の微粒子からできています。たとえば、水素や酸素という語は元素名ですが、水素の微粒子を水素原子(H)、酸素の微粒子を酸素原子(O)といいます。このHやOを元素記号といいます。
 
 原子をさらに細かく分けると、その中央に原子核があり、原子核の周りに電子が雲のように広がっています。これを電子雲といいます。この電子の内で一番外側にある電子がほかの原子との結合に関わっています。
 
そこで、原子がいくつか集まってできた物質を分子といい、2個の水素原子でできた水素ガス(H)は水素分子、2個の酸素原子でできた酸素ガス(O)は酸素分子といい、2個の水素原子と1個の酸素原子が結合した水(HO)は水分子といいます。
 
 これまでの話にでてきた炭酸、ホウ(硼)酸、硝酸、硫酸、アンモニア、硫化水素、リン化水素、一酸化炭素、二酸化炭素(炭酸ガス)、塩化水素(塩酸)、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、メタン、ぶどう糖(グルコース)などは、それぞれの原子が結合していますので、これらを化合物(メタン、ぶどう糖は有機化合物、それ以外は無機化合物)といい、それ自体が一つの分子です。
 
 また、「シリーズ その2」で述べたフグ毒のテトロドトキシンや麻痺(まひ)性貝毒のサキシトキシンは天然有機化合物で、それぞれ一つの複雑な分子です。
 
 そのほか、種々のタンパク質、核酸、多糖類、リン脂質などはさらに複雑な構造で、これらを生体高分子物質といいます。なお、酵素はタンパク質で、細菌毒素はタンパク質またはタンパク質とそのほかの高分子物質からなるきわめて複雑な分子です。
 
3. 水の構造
水は水素原子2個と酸素原子1個が結合した物質であることは、すでに述べましたが、水の構造はどのようになっているのでしょうか?
 
 水の分子は1個の酸素原子の両脇に水素原子が1個ずつ、104.5度の角度で結合しています。そして、水素原子と酸素原子はそれぞれがもっている電子を1個ずつだしあって のように結合しています。このような状態を共有結合といいます。
 
 氷や水では一つの水分子の酸素ともう一方の水分子の水素とが水素結合といわれる状態でつながっているのです。つまり、氷や水では水分子がたがいにプラスとマイナスの引力で結合しているのです。ところが、水蒸気になるとこの水分子どうしの結合が切れて、水分子はばらばらになってその体積が膨張します。
 
また、水蒸気は100℃以上に過熱すると、その圧力が急激に高くなります。これについては、項目6で述べます。
 
 この原理を応用した例がかつて大活躍した蒸気機関車(ロコモーティヴ)で、石炭を燃やすときに出る熱エネルギーで水を沸騰させて水蒸気にして、その高圧の水蒸気が膨張する性質を利用してピストンを動かし、機械エネルギーに変わって大きな車輪(動輪)を回転させるのです。
 
表1.この章にでてくる化学用語
化学用語
 
意  味
  
実   例
 
元素
     
 天然元素
 人工元素
 元素記号

原子

 原子核


 電子
 
 分子


無機化合物
     

有機化合物
     

生体高分子
   

共有結合
     

水素結合
     
     
化学的にそれ以上分解できない物質(111種) 
                       
自然界にある元素(91種)
核反応でつくられた元素(20種)
元素を表す記号

元素を構成している最小粒子

原子の中心にある部分、おもに陽子(+)と中性子からなり電気的に陽性

原子核の周囲にある電気的に陰性の微粒子  

同じ原子または他の原子と結合して、物質の特性をもつ最小単位

種々の原子でできた物質。鉱物とそれから得られる物質のほとんど

炭素を主体に水素、酸素、窒素などと結合した物質。生物中に多い 

生物体を構成しているか、生物体に含まれる複雑な有機物質

原子どうしが互いに電子を出しあって共有の電子対をつくる結合

フッ素、酸素、窒素など電気的に陰性度が大きい原子(−)2個が水素原子(+)をはさんで、その引力で引き合う結合 
水素、酸素、炭素、窒素、鉄、銅、ナトリウムなど
上と同じ
プルトニウムなど
H(水素)、O(酸素)など

水素原子、酸素原子など

すべての原子に共通、陽子・中性子は原子によって数が違う
すべての原子に共通、
原子によって数が違う
水素ガス、炭酸ガス、水、タンパク質、核酸など

塩化ナトリウム、炭酸カルシウムなど

ぶどう糖、タンパク質など


核酸、タンパク質、多糖、リン脂質とその複合体

水分子内の水素と酸素、メタン分子の炭素と水

水分子の酸素と他の水分子の水素など
 
 
4. 水の密度
 ある物質の一定の体積当たりの質量(物体がもっている物質の分量)をその物質の密度といいます。また、物質の比重は、一定の温度で一定の体積の物質の質量(または密度)と標準物質である4℃の蒸留水の質量(または密度)との比率です。4℃(3.98℃)である理由は、水の密度がこの温度で最大になるからです。
 
 ところで、液体の水が0℃で固体の氷になり、その氷が水に浮くことは誰でも知っています。これは0℃での水の密度(0.9999グラム/立方センチメートル)より同じ温度の氷の密度(0.9168グラム/立方センチメート)のほうが小さいからです。ほとんどの物質は、その液体が固体になると、その密度は固体のほうが大きくなります。その一例として、二酸化炭素の液体と固体(ドライアイス)があります。
 
 ところが、水と氷はその逆の性質をもっているのです。このような特殊な性質をもつ物質は水のほかにはケイ(珪)素とチタンなどごくまれです。
 
 この氷の性質は前に述べた(3.水の構造)水分子の水素結合に関係します。氷の場合は4つの水分子が水素結合でつながっていますので、水より分子のすき間が多く、そのため体積が約1/11増えて、水より軽く(密度が小さく)なって水に浮くのです。
 
 この性質は水生生物の生存や地球環境を保つためにたいへん重要なことです。もし、氷が水より重かったら、水の表面の氷は次々に水底へ沈みます。すると、底層の水も冷やされて底層一面が氷になり、やがて、全体が凍ってしまうと、水生生物が生存できなくなるのです。
 
 これが北極や南極の海でおこると、さらに深刻(しんこく)です。広大な極地が全部凍ってしまうと細菌やプランクトンをはじめ動植物も生存できなくなり、一方、気象も変わって地球環境に大きく影響するのです。
 
5. 水の熱量
 水を温めるときには多量の熱が必要です。これは水がほかの物質より熱を多量に蓄える性質(熱容量が大きい)があるからです。だから、いったん、温めた水は冷めにくいのです。
 
 さらに、水を加熱して100℃になると、気体の水蒸気になることも誰でも知っています。しかし、水はほかの物質と比べると、なかなか蒸発しにくいのです。これは蒸発するための熱(蒸発熱)が多量にいるからです。
 
 これらの水の性質は地球の環境を一定に保ったり、生物体内の温度を調節したりする上で大切な役割を果たしているのです。
 
6. 水蒸気の圧力と蒸気機関車
 前に述べたように、水は100℃で水蒸気になります。純粋な水蒸気は無色透明ですが、普通は湯気(ゆげ)やもやのように白く見えます。これは微細な水滴が浮遊しているからで、これを「湿り蒸気」といいます。これにたいして、さらに温度を上げる(過熱する)と水滴がない蒸気になり、これを「乾き蒸気」といいます。
 
 ところが、一定の大きさの容器中にある水蒸気の密度には限界があります。その限界の状態を飽和水蒸気といい、そのときの圧力を飽和水蒸気圧といいます。
 
表2.飽和状態での水蒸気の圧力と密度
温 度
(℃)
水蒸気圧
(atm) 
密 度
(g/1,000cm3)
100
150
200
250
300
374  
     1.0000-
     4.697
    15.35
    39.26
    84.8
    218.0
     0.598
     2.548
     7.86
     19.98
     46.2
    274.0
 
 その飽和水蒸気圧は100℃では1気圧(大気圧)ですが、さらに374℃まで過熱すると、温度が上るにしたがって急激に高圧になります。この高圧の水蒸気は過熱蒸気といわれ、これを応用した好例が蒸気機関車です。
 
 蒸気機関車では、まず石炭(化学エネルギー)を燃やして(熱エネルギー)、水を沸騰させ水蒸気にします。その装置をボイラーといい、この状態ではまだ「湿り蒸気」でその圧力は1気圧ですが、さらに過熱管を通すことで「乾き蒸気」つまり、高圧の過熱蒸気にします。
 その高圧蒸気を円筒型のシリンダーのピストンの左右へ交互に送ると、ピストンが往復運動(機械エネルギー)して、それがクランクで回転運動に変わり、大きな機関車の動輪が回る仕組みになっているのです。
 
なお、このようにある物質がもっている化学エネルギーが燃えること(酸化する)で、熱エネルギーに変わり、さらにそれが機械エネルギーに変わることを「エネルギーの変換」といいます。
 
 生物が生きていける仕組みもまた「エネルギーの変換」です。植物などの光合成生物は太陽エネルギーを取り込んで、種々の物質(化学エネルギー)を作り、動物はそれを摂取してその化学エネルギーで体内物質の反応(代謝:たいしゃ)をはじめ熱や運動エネルギーに変えて生きているのです。
 
 蒸気機関車は機械ですが、その形もさることながら、走っている姿は迫力があり、まるで生き物のようにエネルギーを使っていることに魅力と郷愁(きょうしゅう)を感じている人も多いでしょう。
 
7. 水の表面張力
 大気中の水蒸気が冷えると雨となって地表へ降りますが、その雨や蛇口から出る一滴の水が丸いことは誰でも知っています。水滴が丸いのは水が液体では最大の表面張力(表面積を小さくしようとする力:20℃で72.75ダイン/センチメートル)をもっているからです。
 
 傘やレイン・コートの布の表面には水がしみ込まないように、つまり、水の表面張力を最大にするために、特別の防水処理がしてあるのです。また、水の表面張力の大きさが太古に広大な海ができた原因の一つと考えられています。
 
8. 物質を溶かす性質
 ある固体をある液体に溶かすとき、溶ける固体を溶質、溶かす液体を溶媒といい、溶けた液体を溶液といいます。水はさまざまな物質を溶かすことができる最もすぐれた溶媒です。
 
 その大量の溶液が海水で、堆積物や岩石・鉱石のもとになって、種々 の成分が溶けた溶液である陸水がつくられたのです。また、水は生物体内でもさまざまの物質を溶かして、生体反応が進み、生命を保つために役立っています。
 
9. 純粋な水の製造
 一般に大量に使用される飲料水や産業用水(上水)は浄化された天然水ですが、これらは種々の成分(動植物にとって有用または無害な物質)を含んでいます。
 
 一方、精密な物理学測定や化学分析または微生物の培養などでは純粋な水が用いられます。純粋な水は一般には水を沸騰させて、その水蒸気を冷してえられる蒸留水です。この場合、石英ガラス製の冷却管や受器を用いると、より純粋な蒸留水がえられます。
 
 また、工業的に純粋な水を大量にえる方法には二つあります。その一つは電気透析法といって、中央に半透膜(特定の物質だけを通す膜)をおいた電解水槽に通電して、溶けている不純物を陰陽イオンに分けて除き、純粋な水にする方法です。
 
 他の一つはイオン交換法といって、陽(+)イオンどうしと陰(-)イオンどうし を別々に結合する特殊な水に溶けない樹脂に水を通して、溶けている不純物を除く方法です。
 
 しかし、それぞれには欠点があります。蒸留法では揮発性(低温で気化しやすい性質)の物質(二酸化炭素、塩化水素、ホルムアルデヒドなど)は蒸留水中に溶け込んできます。したがって、あらかじめ酸化剤として、過マンガン酸カリウムを加えた水を蒸留し、蒸留後に再び沸騰させると、これらの揮発性物質を除くことができます。
 
 また、電気透析法やイオン交換法ではイオン性物質(塩分など)は除くことができますが、非イオン性物質(糖分など)は除くことができませんので、イオン性物質のみを含む水に限られます。
 
10. 特定単位の基準
 まず、水は通常の摂氏温度(セルシウス温度)の基準になっています。水が冷えて国体の氷になる温度(氷点)を0℃、1気圧で水が沸騰して気体の水蒸気になる温度(沸点)を100℃ と定められ、その1/100が1度です。
 
 なお、欧米でよく使われる華氏温度(フアーレンハイト温度)は氷点の温度を32F、沸点の温度を212Fと決められています。
 
 また、絶対温度(ケルビン温度)は氷と水と水蒸気が共存する状態(これを水の三重点といいます)の熱力学的な温度の1/273.16を1Kと定められています。したがって、絶対温度O度(-273.16℃)は物理学的に考えられる最低の温度です。
 
 一方、重量の基準として、4℃の純粋な水1リットルを1キログラムと定められています。水は4℃から0℃まで温度が下がるほど体積が増します。これは4℃より下ると水の分子どうしが結合したものが増えるからと考えられています。比重は項目4で述べましたが、4℃の純粋な水(1.000)を標準物質として、その質量(または密度)と一定体積の物質の質量との比率で表したものです。
 
 また、純粋な水1グラムの温度を1℃だけ上げるときに必要な熱量を1カロリーとされています。
 
 このように、不思議な性質をもっている水は、基本的な単位に用いられ、また一方、地球の環境と生命を支える最も大切な物質として存在しているのです。
 
表3.水の特性と物理定数
   理化学用語             特性・定数
  分子の構成          
  化学式            
  分子量(分子ノ質量)       
  色・結晶の形         
  融点(固体が融ける温度:氷点)
  沸点(液体が気体になる温度) 
  密度(グラム/立方センチメートル)   
                 
  比重             
                 
  重量単位(キログラム)      
  熱量単位(カロリー)       
                 
  表面張力(ダイン/センチメートル)   
 水素原子2個と酸素原子1個
 H
 18.016(2水素と1酸素の原子量の総和)
 水:無色、氷:無色六方晶系
 0.0000℃(温度の基準)
 100.00℃(温度の基準)
 水: 4℃ 0.999973  0℃:0.9999
 氷: 0℃ 0.9168
 水: 4℃ 1.000(比重の基準)
 氷: 4℃ 0.915
 4℃の水1リットルの重さを1キログラム
 水1グラムを14.5〜15.5℃まで温めるに要する
 熱量を1カロリー
 20℃: 72.75
 
 
第二章 陸水の特徴
 陸水については、「シリーズ その1」で大体のことを述べましたので、多少重複しますが、ここでは、陸水についてもう少し掘り下げて考えてみましょう。
 
 「陸水」という用語は古い語ではありません。一般に陸上の水のほとんどは淡水ですが、その他に温泉水や塩湖水などもありますので、昭和6(1931)年に淡水研究者の学会を発足させる会合で、「海水」にたいして陸上のすべての水を「陸水」と名づけられたのです。
 
1. 陸水環境
 自然界で「陸水」とよばれる水にはどんな水があるのでしょうか ?
地球上の水の97.2%は海水で、陸水はわずかに2.8%に過ぎませんが、さまざまな陸水環境があります。意外にも陸水の約75%が寒帯や高山地帯にある氷雪や氷河としての水です。次いで、地下水が約21%で、かなり多いと思われる河川や湖沼の水はわずかに約3.6%です。また、土壌(どじょう)や岩石中にも存在し、生物体内の水も生命を保つために不可欠(ふかけつ)です。
 
 また、天然水を利用するために人工的に作られたダム湖、溜(た)め池、用水路、水田、魚貝類の養殖池、井戸、貯水槽のほかに廃水を処理するための浄化槽や沈殿池などいろいろな陸水環境があります。
 
 陸水環境は水の成分によって次の項で述べるような種類に分けられています。
 
 
表4.地球上の水と陸水の割合
   水の存在            割合(%)
 地球上の水       
 1.大気(雲と水蒸気) 
 2.陸水(全体)    
    氷雪・氷河    
    地下水      
    河川・湖沼水   
 3.海水        
   100      ―
    0.001   ―
    2.8   100
    2.1    75.00
    0.6    21.40
    0.1     3.57
    97.2    ―
 
2. 陸水の種類
 陸水のほとんどは湧(わ)き水、河川水、湖沼水のように塩分が非常に少なく、中性の淡水(真水:まみず)です。また、淡水でもカルシウムやマグネシウムの塩類を多量に含む水を硬水(こうすい)というのにたいして、これらの塩類が非常に少ない水を軟水(なんすい)といいます。人間生活で使われるほとんどの水はこの軟水です。
 
 淡水にたいして、塩分を多量に含む水は鹹水(かんすい)といわれ、そのおもな成分が塩化ナトリウムである塩湖の水や海水がそれに当たります。
 
 また、海とつながった湖(太古に海であった湖)や、海へ流れる川の川口近くは淡水と鹹水(海水)が混ざっていますので、このような水を汽水(きすい)といいます。
 
 その他に、特殊な陸水としてカルシウムやマグネシウムの塩類が多量に含まれる石灰岩洞窟(鐘乳洞)の水(硬水)や、種々の無機物を含んで酸性やアルカリ性が強い温泉や鉱山地帯の水があります。このような水を温泉水または鉱泉水といいます。
 
表5.陸水の種類
種 類 意 味 存  在
 1.淡水   
     
    軟水


    硬水


 2.かん水  

 3.汽水   
  
 4.鉱泉水  
       
 塩類(塩分)が少ない水

 カルシウムとマグネシウム塩類が
 非常に少ない淡水

 カルシウムとマグネシウム塩類が
 多い淡水

 淡水の対語 塩分が多い水(塩水)

 淡水とかん水(塩水)が混ざった水

 各種の塩類を含む水
 (酸性、アルカリ性)
 氷雪、氷河、河川、湖沼、池、

 地下水、湧き水、井戸水、
 水田、用水路など

 石灰岩地帯の水、鍾乳洞の
 地下水、地底湖の水とその川水

 海水、塩湖水、岩塩地帯の水

 河口付近の川・海水、海岸の湖水
 
 温泉、冷泉、鉱山地帯の水
 
 
 
 
3. 水の循環
 これらの天然水は蒸発すると水蒸気となって大気へ広がり、それが雲になって大気中を移動します。そして、それが冷やされると雨、雪、ときには霞(あられ)や雹(ひょう)となって地上に降り、再び陸水や海水へ戻ります。これを「水の循環」といいます。この「水の循環」の過程で種々の生命が育まれて、人間もこれを利用しているのです。
 
 しかし、私たちの周りの水(環境水)には、このような天然水を人間生活に利用したあとに、その水質が変化したいろいろな廃水があります。これについて次の章で説明しましょう。
 
 
第三章 水の利用、浄化、水質
 さて、水は私たち人間生活にとって、なくてはならない大切なものであることはもちろんですが、水はどのように利用され、その水はどのようにして浄化され、その性質(水質)はどのようにして調べられているのでしょうか ?
 
1. 水の利用
 生きてゆくために最も大切な水は飲料水(上水)ですが、浴用や洗浄用などの生活用水も欠かせないものです。
 
 また、水は発電、農業や園芸(穀物、野菜、果樹、花の栽培用)、畜産業(家畜の飼育用)、水産業(魚介類の増・養殖用)、工業(化学工業、製薬、醸造用)、食品業(食品の加工、製氷用など)、鉱業(鉱山、精錬、製鉄用など)などの産業用水の他、動・植物園、水族館、宿泊・医療・養護・体育・研究 施設などの用水としても膨大な量が使われています。
 
 これらの水のほとんどは淡水ですが、海産魚の増・養殖業や水族館では多量の海水が使われています。また、国によっては海水や塩湖の水を塩や薬品の製造に使われています。
 
 ところが、これらの水が使われたあと、家庭廃水や産業廃水(下水)として、直接流してしまうと川や海が汚染されて、水生(棲)生物の生態系に大きく影響し、また、衛生面でも危険に曝(さら)されることは目に見えています。
 
 水環境を保全するために汚水防止法という決まりもあります。そこで、環境を保全するために、これらの廃水を浄化して自然界へ還す必要があるのです。
 
2. 水を浄化する方法
 汚染された水を浄化するために、規模が大きい公営のいろいろなタイプの浄水場があり、家庭や企業では浄化槽が設けられているのです。一般家庭での汚水処理には空気が必要な(好気的)微生物によって分解させる方法がとられています。
 
 大量の上水や下水を浄化する方法には濾過法、沈殿法、イオン交換法、微生物分解法、殺菌法(紫外線法、塩素法、オゾン法など)がありますが、多くの場合はこれらの方法が組み合わされています。
 
3. 水質を調べる方法
 さまざまな環境水のpH、成分、汚染度など水の性質を水質といい、それを調べることを水質試験または水質検査といいます。これは淡水(河川や湖沼)、海水、温泉水などの天然水と種々の廃水など、水によって試験する項目が違います。一般には浮遊物の量やpH、化学成分などの物理・化学的試験と、一般細菌、海洋細菌、大腸菌群などの数を調べる細菌試験が行なわれます。
 
 水が有機物によって汚染されているかどうかを調べるために、二つの方法があります。一つは有機物によって減る酸素量を調べる化学的酸素要求量(COD)です。他の一つは酸素を使う(好気的)微生物によって減る酸素量を調べる生物化学的酸素要求量(BOD)です。
 
 そのほか、アンモニア、亜硝酸、硝酸などに含まれる窒素や硫化水素などの硫黄(イオウ)や種々の有害物質も調べます。また、大腸菌群の数は糞便によって汚染されているかどうかの目安(指標)になっています。
 このように、単に水といってもさまざまな角度から見ると、大変奥深い物質であることが判ってきます。
 
 
第四章 世界の川と湖
 地球上の広大な陸水の中で、最も多くの生物が棲んでいる環境といえば、やはり川と湖でしょう。ところで、世界にはどのような大河や大湖あるいは特殊な湖があるのでしょうか ?
 
1. 世界の大河
 川の流域面積では、世界最大の川は南米のアマゾン川(7,050,000平方キロメートル)で、第2位はアフリカのザイール川(3,690,OOO平方キロメート)、第3位は北米のミシシッピ川(3,248,OOO 平方キロメート)です。
 
 おもしろいことに、ブラジルのアマゾン川とヴェネズエラのオリノコ川は上流でつながっているのです。つまり、アマゾン川上流のカシキアレ川がヴェネズエラのピエドラ・ライス付近でオリノコ川と別れて、別々に遠く1,600 キロメートルも離れた河口から大西洋へ流入しているのです。
 
 また、日本の大きな川は流域面積では第1位が利根川(16,840平方キロメートル)、第2位は石狩川、第3位は信濃川です。
 
 一方、川の長さでは、世界最長の川はアフリカのナイル川(6,690キロメートル)で、第2位は南米のアマゾン川と中国の長江(6,300キロメートル)、第3位は中国の黄河(5,460キロメートル)です。これらの大河にはその川特有の淡水生物も生息しています。
 
 また、日本最長の川は信濃川(367キロメートル)で、第2位は利根川、第3位は石狩川です 。流域面積で世界最大のアマゾン川は利根川のおよそ419倍、世界最長のナイル川は信濃川のおよそ18倍ですから、そのスケールは桁違いです。
 
なお、河口の広さと大満潮が関係しておきる異常現象は、海底の地殻変動でおきる津波と違って、海嘯(かいしよう)とよばれています。世界的に有名な海嘯は南米アマゾン川の大逆「ポロロッカ」と中国淅江省にある銭塘(チエンタン)江の大逆流です(平成18年4月3日、NHKテレビで放送)。
 
 
 
表6.世界の大河
順 位
面積 長さ
地域・国名
      
川 名
          
流域面積
(平方キロメートル)
長さ
(キロメートル)
   1  (2)
   2  (5)
   3  (10)
   4  (4)
   5  (1)
   6  (11)
   7  (9)
   8  (7)
   9  (8)
  10  (6)
  11  (2)
  28  (3)
南 米
アフリカ
北 米
南 米
アフリカ
ロシア
ロシア
ロシア
ナイジェリア
ロシア
中 国
中 国 
アマゾン川
ザイール川
ミシシッピ川
ラプラタ川
ナイル川
オビ川
エニセイ川
レナ川
ニジェル川
アムール川(黒竜江)
長江(揚子江)
黄 河
  7,050,000
  3,690,000
  3,248,000
  3,104,000
  3,007,000
  2,947,900
  2,591,500
  2,383,700
  2,092,000
  2,051,500
  1,808,500
   752,400
  6,300
  4,370
  3,780
  4,500
  6,690
  3,680
  4,130
  4,270
  4,180
  4,350
  6,300
  5,460
 
2. 湖の区分
 世界の湖は湖水の塩分濃度によって、一番多い真水(まみず)の淡水湖、海岸の近くにあって淡水と海水が混合している汽水湖、水1リットル中に塩類が0.5グラム以上含まれている塩湖または鹹水(かんすい)湖に分けられます。
 
 汽水湖の塩分は海に近いほど濃く、内陸へ入るほど塩分は薄くなります。また、侵入した海水は淡水より重いので、塩分は深い部分ほど濃いのが普通です。
 
3. 世界の大湖
 世界最大の湖は中央アジアのカスピ海(374,000平方キロメートル)です。日本最大の琵琶湖(672.8平方キロメートル)のおよそ550倍もある大湖です。カスピ海はアラル海と共に、太古の海(第三紀に黒海と連なっていたサルマチア海)が変化してできた湖です。
 
 カスピ海には淡水域と塩水域(海水塩分の1/3)があり、湖面は海面下28メートルで、沿岸の北部と南部の一部は海面下の低地帯です。ロシアの大河ボルガ川はこの大湖へ流入しています。
 第2位は北米の五大湖の一つであるスペリオル湖(82,367平方キロメートル)で、淡水湖としては世界最大の湖です。
 
 第3位はアフリカのビクトリア湖(68,800平方キロメートル)です。アフリカでは最大で、淡水湖としては世界第2位です。アフリカの大河ナイル川はこの湖から地中海へ流出しています。
 
 また、アフリカのチャド湖やカンボジアのトンレ・サップ湖は雨期と乾期でその面積が大きく変わります。
 
4. 世界の塩湖
 大きさでは世界で第13位ですが、中央アジアのカザフスタンとウズベキスタン両国にまたがるアラル海(約23,400平方キロメートル)は塩湖としては世界最大です。水深は比較的浅く(最大深度約54メートル)年々面積が狭くなっています。アラル海はカスピ海と同じように太古の海が変化してできた湖で、塩分は海水の1/3で固有の生物種が多い湖です。
 
 カザフスタンのバルハシュ湖やオーストラリアのエーア湖などもその面積が季節で大きく変わります。
 
 塩湖としてよく知られているのは、アメリカのグレート・ソルト湖(4,660平方 キロメートル)とイスラエルとヨルダン国境にある死海(1,050平方キロメートル、長さは約75キロメートル、幅約15キロメートル)です。
 
 グレート・ソルト湖の塩分濃度は20〜25%で、水深は浅く最深部は僅か11メートルです。死海は太陽が照りつける広大な砂漠の低地(ヨルダン地溝帯)に青緑色に輝いて、その湖面は海面下395メートルにある地球上で最も低い水面で、最深部は339メートルです。流入する川はヨルダン川とアルノン川で、流出する川がないので蒸発する水分が多く、その塩分濃度は23〜25%にも達し(とくに臭素が海水の100倍)ています。湖底も湖岸も一面に塩が析出しています。したがって、ほとんどの生物種は生存していませんが、高濃度の塩分を好む強好塩細菌とある種の緑藻が生息している特殊な湖です。
 
 近年、ヨルダン川の水量が減少していて、ますます水位が低くなり、塩分濃度も高くなりつつあるといわれています。
 
 筆者は平成8(1996)年に死海へ行く機会がありました。観光客でにぎわい濃い塩分のせいで、水浴してもただ浮いているだけで決して沈みません。長く浸かっていると肌がひりひりと痛く、15分以上の水浴は禁止(やぐらに監視人)されていて、上がるとすぐ真水のシャワーを浴びます。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

       筆者(左端)・死海に浮かぶ           筆者(左)・死海から出て真水のシャワーで塩分を流す
 
 塩湖としてはそのほかに、トルコのトゥズ湖、キプロスのキプロス塩湖、シリアのパルミラ湖、アフリカ・チュニジアのジェリド湖、ケニアのエルメンテイタ湖とナクル湖、インドのサムバール湖、新彊(しんきょう)ウイグルのロプノール(羅布泊)湖などがあります。
 
 中でも、パルミラ湖は乾期には水が干上がって湖がなくなります。また、タクラマカン(塔克拉瑪干)砂漠のタリム(塔里木)盆地東端にあるロプノール(2,400〜3,800平方キロメートル)にはコンチェ川(孔雀河)が流入しているだけで排水川がなく、気候の変化で湖面が移ることから、古くから“さまよえる湖"とよばれています。
 
 塩湖水の主成分は塩化ナトリウムですが、ほかの特定の化学成分によって、グレート・ソルト湖のような塩化物型、死海のような苦土(マグネシウム)型、中国東北部(旧満州)やモンゴル(蒙古)に数多くある炭酸塩(ソーダ)型などに分けられています。したがって、塩湖にはそれぞれの化学成分による特徴をもった生物が生息しているのです。
 
表7.世界の大湖(淡水・塩水・汽水湖)
順 位
面積・深度
地域・国名
 
湖 名
      
面 積
(平方キロメートル)
最深度
(メートル)
湖水の種類
 
特 徴
 
  1   (3)
  2   (5)

  3  (11)
  4   (8)
  5   (6)
  6   (2)
  7  (12)
  8   (1)

  9   (10)
 10  (13)
 11  (18)
 12  (15)
 13  (14)
 14   (4)
 15   (9)
 16  (17)
 17   (7)
 18  (19)
 19  (16)
 20  (20)
     
中央アジア
北 米

アフリカ
北 米
北 米
アフリカ
カナダ
ロシア

カナダ
北 米
アフリカ
カナダ
中央アジア
アフリカ
北 米
カザフスタン
ロシア
カンボジア
ヴェネズエラ
オーストラリア
       
カスピ海
スペリオル湖

ビクトリア湖
ヒューロン湖
ミシガン湖
タンガニーカ湖
グレート・ベア湖
バイカル湖

グレート・スレーヴ湖
エリー湖
チャド湖
ウイニペグ湖
アラル海
マラウイ湖
オンタリオ湖
バルハシュ湖
ラドガ湖
トンレ・サップ湖
マラカイボ湖
エーア湖
      
374,000
82,367

68,800
59,570
58,016
32,000
31,790
31,500

28,440
25,821
 (25,000)雨期
23,750
23,400
22,490
19,009
 (18,430)雨期
18,135
 (16,000)雨期
13,010
  (9,690)雨期
      
790
406

84
228
281
1,471
82
1,741

163
64
11
36
54
706
224
26
230
9
35
5.7
   
淡水・塩水
淡 水

淡 水
淡 水
淡 水
淡 水
淡 水
淡 水

淡 水
淡 水
淡 水
淡 水
塩 水
淡 水
淡 水
塩 水
淡 水
淡 水
汽 水
塩 水
      
湖面:海面下28m
世界最大の淡水湖
アメリカ五大湖の一つ
アフリカ最大
アメリカ五大湖の一つ
アメリカ五大湖の一つ
世界最長、固有種
年間ほとんど結氷
世界最深、透明度
世界1, 2位*
年間ほとんど結氷
ナイアガラ滝
乾期:10,000km2
年中濁った湖
世界最大の塩湖
透明度世界有数
アメリカ五大湖の一つ
季節変動が激しい
ヨーロッパ最大
乾期:2,500km2
世界最大の汽水湖
季節変動が激しい
塩分は死海に次ぐ
 *:透明度は日本の摩周湖と1, 2位を競う(季節によって変わる)。
 
 
5. 世界の汽水(きすい)湖
 汽水湖は塩湖の一種ですが、ここでは分けて述べます。汽水湖としてはヴネズエラに世界最大(南米最大)のマラカイボ湖(13,010平方キロメートル)があります。この湖はヴェネズエラ湾からの海水が湖の北部へ流入して、南部の淡水と混合して汽水湖になっています。スケールはずっと小さいですが、日本のサロマ(佐呂間)湖ノトロ(能取)湖浜名湖なども汽水湖です。
 
6. 世界最高地にある湖と最深の湖
 地球上で最も低い土地にある死海については述べましたが、その逆に南米のアンデス山中にあって、ペルーとボリビアにまたがるチチカカ湖(8,372平方キロメートル)は南米最大の淡水湖で、世界で最も高い場所(海抜3,812メートル)にある湖で最深部は281メートルです。
 
 また、面積としては第8位ですが、世界で最も深い湖はロシアのバイカル湖で、最深部は1,741メートルもあります。この湖は淡水湖で“シベリアの青い真珠”ともいわれ、透明度は日本の摩周湖と世界で一、二位を競っています。そのほか、この湖は古い歴史(約3,000万年前)があること、地球上の淡水の約20%の水量が集まること、固有種を含めて数多くの生物種が生存していることはその水深と共に世界一を誇っています。
 
 次の「シリーズ その4」で、さまざまな陸水の生態系と微生物の働きについて述べたいと思います。
 
 
平成19年7月6日
著作 野村 節三(せつぞう)
野村環境微生物学研究室 代表
(北里大学名誉教授、理学博士) 
 
 
 
 

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