一見地味に思える研究課題であっても、極東の地よりはるばるやってきた北里先生にとっては、本格的に細菌学を学ぶ千載一遇の好機到来であるから、寝食を忘れて没頭するに値する研究であった。その次のテーマは、家畜の伝染病として酪農家には大変に恐れられていた伝染病炭疽の原因菌である炭疽菌に汚染された牧場の土壌についての研究で、地表からどのくらいの深さまで当該菌が生息(生育・増殖)できるかを調べることであった。
この研究を徹底的に実行した結果、地表の土壌には多くの種類の細菌が数多く生息していること、地表から掘り進んでいくと段々と細菌の種類も数も少なくなること、土壌のサンプルを加熱すると芽胞を作らない細菌を殺すことができることなどを知りえたのである。これらの結果は、その後の研究に大いに役立つのでした。