ヒトの間だけを渡り歩くウイルス

 病原ウイルスの中にはヒトからヒトに感染増殖しながら存在しているウイルスがあります。ヒトの個体は一度ウイルスに感染するとその特定のウイルスにたいして免疫を獲得し、当分の間そのウイルスの感染増殖をゆるしません。したがってこの群のウイルスが増える為には常に新しいヒトを探さねばなりません。これはかなり厳しい生存条件となります。麻疹ウイルス感染によりヒトは生涯にわたる免疫を獲得します。したがって麻疹ウイルスがこの世で生存してゆくためには免疫のない新生児を見つけなければいけません。
 Brownは人口サイズの異なる島社会を選び5年間に毎月麻疹患者が報告される、つまり麻疹ウイルスが絶えることなく生き続けるにはどのくらいの人口が必要かを調べました。
 その結果は表1のように少なくとも50万人は必要という結果となりました。つまりこれだけの人口が無い島では外部から麻疹ウイルスの輸入がないとウイルスは絶えてしまうのです。ヒトだけを利用するウイルスにはこのような厳しい環境下で生存する運命にあります。
表1.異なる人口の島での麻疹ウイルスの生息
人 口
(千人)
年間出生率
(千人)
1959-1964年間の
麻疹患者発生月数(%)
フォーホクランド 2.5 0.04 0
ナウル 3.5 0.17 5
クック 16.0 0.7 6
トンガ 57.0 2.0 12
ソロモン 110.0 4.1 32
フィジー 346.0 13.4 64
ハワイ 550.0 16.7 100

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