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499. ザンゴウ熱原因菌に近縁の新細菌発見.7-28-2008.
キーワード:新Bartonella属菌、ザンゴウ熱、Bartonella rochalimae、DNA分析
 
塹壕(ざんごう)熱の原因菌
第1次世界大戦中に何万人もの多くの兵士を悩ました塹壕(ざんごう)熱と呼ばれる感染症があります。この塹壕熱は、Bartonella quintanaとし呼ばれるバルトネラ属の細菌が原因でヒトジラミを介してヒトからヒトに伝播し、兵士の脚と背部の強い痛みと発熱を主な症状とるものです。
第1次世界大戦終了後になると塹壕熱はあまり見られなくなってしまいました、その原因は衛生状態の改善からシラミの大発生が無くなったことによります。
 
いまから10年ほど前(1990年代)にアメリカで「ネコひっかき病」が流行し、1年間に2万5千人以上の患者がでた。ネコひっかき病の原因は、いまから80年以上も前に第一次世界大戦中に流行った塹壕熱の原因菌Bartonella quintanaと近縁であることが遺伝子の比較から判明し、Bartonella henselaeと命名されました。
Bartonella henselaeが猫の飼い主や飼い主を訪ねた客がネコにひっかかれた後にリンパ節の腫脹や発熱を生じる感染症です。ところが米国のエイズ患者に重度の感染を生じる細菌の一つがBartonella henselaeであることが明らかにされるようになりました。
Bartonella henselaeに感染したエイズ患者が飼育しているペットのネコのほとんどが血中にこの細菌を保有していることが判り、サンフランシスコ地域で検査したペットのネコの約41%で血中にBartonella henselaeが見つかった。
 
休暇でアンデス山脈を旅行した者が、帰国後にマラリアやチフスのような生命をおびやかす貧血、脾腫(脾臓の腫れ)、数週間の高熱などを発した。
 
新しい菌の分離
ペルーのアンデス山脈をトレッキングしてきた人がマラリアやチフスかのように重度の貧血や高熱などを発症した。アンデス山脈は、サシチョウバエにより伝播するBartonella バルトネラ属の土着地域であるため、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症学のJane Koehler博士は、当初この患者はハエにより感染したと考えていた。
 
ところがこの患者から原因菌としい細菌を分離したが、バルトネラ属の細菌であるらしいが、これまでに分離されている塹壕熱菌Bartonella quintanaやネコひっかき病菌Bartonella quintanaとは明らかに異なることがわかり、新種のバルトネラ菌であることからBartonella rochalimaeと命名された。
 
 
新しい細菌の名前の由来について、簡単に説明します。
いまから100年ほど前にさかのぼる歴史的なことから始まります。H. T. Rickettsリケッツが、1906〜1910年ロッキー山紅斑熱のダニによる媒介と、発疹チフス患者血液および吸血シラミの組織内に桿菌様小体を発見したのがRickettsiaリケッチアの最初の発見です。しかし、残念ながらリケッツは1910年に発疹チフスの犠牲になってしまいました。1915年にはS. von Prowazekプロパゼックも発疹チフス患者にリケッツと同様に小体を発見したが、プロパゼックもリケッチアに感染して命を落としてしまいました。1916年になってH. da Rocha-Limaが発疹チフス患者からのシラミの腸管細は微生物を発見して、リケッツとプロパゼックの栄誉を永遠に残す目的でRickettsia prowazekiiと命名しました。以前Rochalimaea属として独立していたRochalimaea quintana塹壕熱菌は、現在はBartonella バルトネラ属に変更されている。
今回新たに発見されたBartonella バルトネラ属の細菌は、これまでに分離されている2種の細菌と異なること、およびH. da Rocha-Limaの偉業からBartonella rochalimaeと命名されたようです。

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