第17話
 人間って凄い! でも、これからは地球のことも考えなくては
 

 
 
「主な対象読者」
 今回の話題は、年齢に関係なくどんなひとでも読んで
もらえる内容だと思います。
 人間って素晴らしい、生きているだけでも素晴らしい、
歴史的にみても動物と人間は大違いである、もうそろそろ地球のことも考えなくては・・・などを感じ取ってもらえれば
幸いです。
 
 
 
本 文 目 次
1.イルカもアシカもお利口さん
2.私たちの祖先は陸に上がった
3.私たちの祖先は「火」を恐れなかった
4.神はこの世を創造した
5.石油や金などをめぐって人間は争う
6.20世紀の人類は失敗を犯した
 
著作 最首 公司
 

 
 
第17話 人間って凄い! でも、これからは地球のことも考えなくては
 
1.イルカもアシカもお利口さん
 水族館に行って、いろいろなサカナを見るのも楽しいけど、私がいちばん楽しみにしているのは、イルカやアシカのショーだ。若いお姉さんが「ジャンプ!」というと、イルカたちはいっせいに水中から跳びあがって見事なジャンプを見せてくれる。アシカはどうして鼻の先で、あんなにうまくボールを操ることができるのだろう。お客さんがその見事な芸に拍手するのを忘れていると、アシカが催促するように両前ヒレで拍手するからたまらない。
 
 「イルカもアシカもお利口さんねぇ」というお母さんの言葉に、こどもたちは目を輝かせながらうんうんとうなずく。イルカもアシカもクジラも海に住む哺乳類の知能指数は高く、運動能力は人間よりも優れている。それなのになぜビルを建てたり、自動車を走らせたり、飛行機を飛ばすことができないのだろう。不思議だねぇ。どうしてだろう?
 
 その答えは、そう難しいものではない。地球が誕生して46億年になるそうだけど、20億年くらい経ったころ海に生物が現れ、次第に進化し、分化していった。それからまた20億年くらい経ったころ、海に住む生物の一部が陸に上がり始めた。海中の生物の一部が「えら呼吸」から「肺呼吸」に変わることができたのだ。私たちの祖先も、おそらく人間の形にはまだなっていなかったかも知れないが陸に上がった種の一つだ。
 
 
2.私たちの祖先は陸に上がった
 人間にとっての、最初の大きな転機はこのときだと思う。イルカやクジラの祖先は陸に上がらず、海に住むことを選んだ。もし、私たちの遠い祖先がイルカたちと同じように海に住みつづけていたら、自動車も飛行機も動かせなかっただろう。なぜなら、海の中には「空気」がないからエンジンが使えない。もっと身近な例でいうと、海の中では「火」が使えない。
 
 では、陸に上がった生物が全部、「火」を使えるようになったのか、というとそうではない。人間に最も近いといわれるサルの仲間でも、マッチをすったり、ライターで火をつけるたりはできない。火がとっても恐ろしいからだ。
 
 
3.私たちの祖先は「火」を恐れなかった
 ぼくはいまから45年ほど前、インドの山奥ですごい体験をしたことがある。食糧学者や外科医、生薬の学者ら8人でインドのほぼ全土をマイクロバス2台で回ったのだ。でも、ただ車で走るだけなら「すごい体験」とはいえない。ぼくらがやったことは、ジャングルの奥の奥にある先住民の集落にいって、そこで先住民と2週間ほど一緒に過ごしたのだ。
 
 そこではマッチもライターもない。木と木を摩擦して火を起こすのだ。だから一度おこした火は消えないように、とても大切にする。火の番をする人はその集落では2番目に偉い人なのだ。
 
 村の人たちは家でうっかり火を消してしまうと、火番のところに種火をもらいにくる。そして、夜になると、生垣や土塀で囲まれた村の3ヵ所の出入り口に焚き木を積んで燃やすことを始める。なぜそんなことをするのかというと、トラやヒョウや毒ヘビが村の中に入ってこないようにするためだ。ぼくはこの村の近くで、野生のトラ3頭に出会ったことがある。それくらいトラが多い。
 

 そんなトラも火には近寄らない。火が恐ろしいからだ。トラだけではない。どんな動物も火を怖がる。だから、村の出入り口で火をたいて害獣が村に入れないようにしていたのだ。ぼくはそのとき、人間が最初に火を手にした動機は、料理をつくるためでなく、暖房をとるためでもなく、自分たちの身を守るためだったのではないかと思った。
 
 不思議なことは人間だけは怖がらずに火を起こし、焚き火をしたり、料理に使ったり、土器を焼いたり、銅器や鉄器をつくったりすることだ。
 
 人間にとっての第2の転換期はこのときだったと思う。いまからざっと2〜300万年ほど前、猿人から原人、そして新人(ホモサピエンス、またはホモエレクトスと呼ばれる)になったころのことである。
 
 そう考えると、最初の奇跡とは私たちの祖先が陸に上がったこと、そして第2の奇跡とは私たちの祖先が火を恐れずに「火」を使ったこと、といえるだろう。この二つの奇跡があったから人類は文明を築くことができたといえる。偶然にしては話がうま過ぎる。そこで人類はこれを人間業と考えないで、「神業」と考えて、この世を創造した「神様」を敬うことになった。

 もっとも、日本の神様はちょっと違う。これは別の機会に話をしたいが、日本の神様、つまり「日本をつくった神様」は、宇宙ができた後で現れている。いま、私が「神様」というのは、旧約聖書や新約聖書に出てくる神様のことである。
 
 
4.神様はこの世を創造した
 しかし、神様はこの世を造り、人間をつくり、人間のためにいろいろなものをつくってくれたが、欲張りの人間はいいものや便利なものを見ると欲しくなる。
 
 そこで神様は「人を殺してはいけない」「他人のものを奪ってはいけない」「ケンカや戦争はしてはいけない」など、人間が仲良く暮らせるように教えるのだが、どうも欲の深い人間は(これも神様から授かった本能がけど)良いものやきれいなものを見つけると欲しくなり、時には腕づくでも奪ってやろうという気になってしまう。
 
 そのうえ、都合の悪いことには、神様が違うと命じることまで違ってしまう。いろいろな集団がそれぞれ「神様」をもつことになり、Aという集団はA神様をもって、Bという村はB神様をもって信仰する。Aになにか有難いことがあればA神様をお祭りし、B村に困ったことが起こればB神様にお願いして助けてもらおうとする。
 
 ところが、困ったB村の人たちが豊かなA集落へいって食べ物や貴重品を奪ってこようとする。誰も他人のもの盗んだり、奪ったりすることはよくないことだと判っているから、言い訳をする。その言い訳に使われたのがそれぞれの神様だ。B村の人たちがA集落を襲うとき、「私たちのB神様の命令によって」といって、自分たちの行為を正当化する。
 
 襲われたA集落の人たちは、「わが神Aの名において報復する」と、ここでも神様の名を出して報復を正当化する。
 
 もし、これが他の動物であれば、せいぜい噛み付いたり、角を突きあったり、蹴飛ばしたりするくらいですむが、火を手に入れた人間はそれだけではすまない。神様の名を使って、家を焼いたり、村ごと焼き払ったり、あるいは村人全員を皆殺しにしたりする。
 
 「文明」を築いた人類は、とても便利で快適な生活をおくれるようになった。おいしいものを腹いっぱい食べ、エレビを見たり、スポーツを楽しんだり、けがをすれば救急車で病院に運ばれ、感染症も防げるようになった。
 
 
5.石油や金などをめぐって人間は争う
 ところが、その一方で「火薬」や「鉄砲」が発明されて簡単に人や動物を殺し、ダイナマイトを使って野山を削り、ブルドーザーを走らせて森林を切り開いた。挙句の果てに原子力を利用して原子爆弾までつくるようになった。
 
 世の中が便利になり、病気も少なくなり、海外旅行も簡単にできるようになった反面、石油や金など地下資源をめぐって戦争もするようになった。戦争をするときも、人間は「神様」を使った。戦争するときに使われる神様は、にせ者が多い。本当の神様だったら、戦争をしようという人間を「バカなことをするな」と止めるはずだ。なぜなら、人間をつくってくれたのは神様だからだ。神様が創った人間を、同じ神様がつくった人間が殺すなんてことを神様は許すはずがない。だから「戦争してもいい」という神様は本物でなくてニセ者に違いないのだ。
 
 本当は、神様を利用して戦争をして、それで石油や金を奪い合うよりも、みんなが必要な分だけ公平に分かち合うようなルールをつくればよかったのだ。20世紀の人類はそれができなかった。資源の配分に失敗したのだ。
 
 
6.20世紀の人類は失敗を犯した
 なぜ失敗したのか。それは自分のことしか考えなかったからだ。自分の命を守ってくれる神様、自分の家族を守ってくれる神様、自分たちの国を守ってくれる神様、それが本当の神様だと信じていたのだ。
 
 ところが、これからは「地球」のこと考えなくてはいけなくなった。「地球の温暖化」を放っておくと、人類も動物も植物も死んでしまうからだ。そこでこれから世の中に出て行く若い人たちの仕事が出てくる。それは、20世紀までの人類が「神様」だと思っていたのはニセ者で、本当の神様は「地球を守ってくれる」神様であること、その本物の神様を見つけることだ。それが、21世紀の人類の最初の仕事になるはずだ。
 
「完」
2007年5月10日
 最首 公司(さいしゅ こうじ)
 
   
 

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