ネズミから感染するウイルス
齧歯類は昔から人間社会に密接して生存していた動物です。齧歯類からヒトが感染を受けるウイルスがあります。表2にその主なものをあげました。日本で1970年代に大学医学部の研究室で妙な病気が流行しました。これが日本における腎症候性出血熱の記録の始まりでした。
ウイルス名
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媒介動物
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病気の種類
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発生場所
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Hantaan virus
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セスジネズミ
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腎症候性出血熱
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中国、韓国、ロシア
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Seoul virus
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ドブネズミ
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腎症候性出血熱
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中国、韓国、日本、米国
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Pumula virus
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ヨーロッパヤチネズミ
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腎 症
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ヨーロッパ
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Sin Nombre virus
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シカネズミ
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肺症候
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北米、南米
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Lassa virus
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マストミス
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ラッサ熱
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西アフリカ
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Junin virus
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Calomys musculinus
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アルゼンチン出血熱
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アルゼンチン
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Machupo virus
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Calomys callosus
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ボリビア出血熱
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ボリビア
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LCM virus
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マウス
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リンパ球性脈絡髄膜炎
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全世界
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この研究室の事件は1980年までに20件123名の犠牲者を出しました。原因は野ネズミが動物業者のラット繁殖場にウイルスを持ち込んだ為と考えられています。現在ではハンタウイルスは地球上広範囲に生息する齧歯類に発見されています。1993年には米国のニューメキシコからコロラド辺りに27名のハンタウイルスによる肺炎患者が発生し大きな話題を呼びました。その後、同様な病気が南米大陸でも見つかりました。齧歯類の世界では殆ど症状を出すこと無く、ウイルスが母子感染、集団の中の水平感染によって感染が拡大しています。しかも齧歯類の中のドブネズミは人間の目を逃れて船舶により遠隔地に旅行することが知られています。ハンタウイルス感染がある程度拡大すると、ネズミの尿中に排泄されるウイルスのエロゾールによりヒトが感染し発病するのです。