◆魚類の武田微胞子虫 [Microsporidium takedai]

 武田微胞子虫症は1933年、北海道の千歳川水系で飼育されていたニジマス(心臓)の原虫寄生症として、武田志麻之輔(日本)によって初めて研究され、その原因が微胞子虫類であると報告された。その後、阿寒湖や苫小牧の近くにあるトキト沼、さらにサハリンの川でもサケ科魚類にこの病気が発生した。
症状は慢性型では心臓筋肉だけが冒されるが、外観的には異常がみられない。しかし、急性型では心臓や体側筋肉などに紡錘型(3-4mm)の白色の胞子嚢(シスト)のような集塊ができ、病気が進むと魚の体が起伏し、心臓が肥大してその表面に突起ができる。ついには筋肉繊維が壊死(えし)などをおこして死亡することもある。サケ科の魚類だけが感染するが、とくにヒメマスや若年魚に症状が重い。
原因となる原虫はグルゲア症原虫に似た微胞子虫類の1種であるが、現在、分類が定まらず、ミクロスポリジウム属にまとめられている。胞子(3-5μm)は卵形で、水温が15℃以下でできる栄養型の細胞は多数の核をもつ柱状である。分裂すると2ケの胞子をつくるが、魚体内では組織との間に膜をつくらない。したがって、発病を防止する手段として飼育水温を13℃以下に抑えると有効である。なお、"べこ病"とよばれるブリ(筋肉)の原虫病の原因も微胞子虫類のミクロスポリジウム・セリオラエ(M.seriolae)である。

関連 微胞子虫類
関連 サケ科魚類
関連 シスト
関連 壊死(えし)